菅沼金六（すがぬま きんろく、1904年7月1日生～1988年9月9日没）は、一水会常任委員・日本水彩画会会員として活躍した洋画家。東京生まれ。日本大学社会科で学んだ後、電気技術者やディスプレイ・デザイナーとして活動し、1933年にはシカゴ万国博覧会の日本展示場の設計・施工を担当し渡米。アメリカン・アカデミー・オブ・アートを卒業後に帰国し、1940年から一水会に出品、1957年には日展で「白鳥の踊り子」により岡田賞を受賞した。バレリーナや室内の女性像を主題とし、明るい色彩を特徴とする作品を多く描いた。

菅沼金六「裸婦」油彩 60号 大作 1971年作 日展出品作
一水会常任委員、日本水彩画会会員として活躍した洋画家・菅沼金六による本作《裸婦》は、1971年の日展に出品された代表的な大作です。幅130cmに及ぶ画面に描かれるのは、静かに横たわる一人の女性像。グリーンのソファに身を預け、透けるような淡い布をまとった姿は、気品と落ち着きに満ち、見る者を静かに魅了します。とりわけ目を引くのは、美しい顔立ちの女性の表情です。どこか思索的なまなざしと、穏やかに結ばれた口元は、作者が理想とした女性美の象徴ともいえるもので、室内の柔らかな光の中でその美しさが際立ちます。女性を包む光と陰影、肌の繊細なグラデーション、ソファやクッション、ランプに至るまで細やかに描かれた室内の調和が、全体に温かく豊かな空気を生み出しています。

菅沼は、アメリカ留学で得た色彩感覚とデザイン的視野を背景に、バレリーナや女性像を主題に多くの作品を残しました。本作もまた、単なる写実を超え、精神性と静謐を兼ね備えた一作として、彼の画業の中でも際立った存在感を放っています。女性のしなやかな姿と静けさが、時代を越えて普遍的な美として結晶した、菅沼芸術の到達点ともいえる作品です。画伯の裸婦像の名画です。