1920年代から30年代初頭にイタリア Lenci社で生まれたレンチドール。
その高い芸術性と確かな技術力によって世界に知られることになり、その後ビスクドールに変わるものとしてヨーロッパ各地でも似たクロスドールが作られてゆきました。本家を尊重して、彼らは「レンチタイプドール」と呼ばれています。
背中の縫い合わせ、中指と薬指を縫い合わせる指のつなぎ方、左右いずれかに向いている瞳など、このドールはレンチドールの全ての特徴を有しています。
クロスドールはビスクドールのようにスリープアイやフルーティアイの機能を備えることができませんが、このように視線が正面を外すことによって、時にアンニュイな雰囲気を、時にキュートな表情を生み出しています。
この子は、ヨーロッパの大戦を奇跡的に潜り抜けて今に残りました。
欠点としては、お顔や肌に経年による色変わり、ドレスの一部(袖とスカート)に数㎝程の切れがあるところです。
また、左手と右腕に色の少し異なるフェルトが目立たないように埋め込まれたところがありますが、これは専門家による修復と思われます。
こんなところからも、きちんとお手入れが施され大切にされてきたことが伺われます。
ドレスは淡い空色のシルクオーガンジー、フェルトのお花がとめられています。着脱可能です。
ボネもドレスと共布で、大きなシルクのリボン飾りが付いています。
ドレスの下には、細い糸で織られたコットンローンの上質な下着を着ています。
靴はフェルト製。
多くの愛好家達から望まれて、1980年代にニューレンチというクロスドールが生み出されるのですが、こちらは量産もので残念ながらアンティークレンチの味わいは再現できなかったようです。
身長 約 35㎝
手足が動かせます。
おすわりさせることはできません。