FANTASTIC PLASTIC MACHINE=田中知之は、ストリングスや女性コーラスを巧みに使った、ファンタジックでドリーミーなエレクトロニック・ミュージックが身上といえる。この4枚目のアルバムも「Reaching for the Stars」「Never Ever」などでそうした“田中印”の音が炸裂するのだが、全体としては前作までのラウンジ色やエンターテインメント色がやや後退し、シンプルな音作りになった印象だ。特に目立つのがギターの多用。シングル・ヒットの「Why Not?」はアコースティック・ギターをフィーチャーしたエレクトロニカ的アプローチだし、「Philosophy」などはアヴァンギャルドなノイズ・ギターとラップとがからみ合うエクスペリメンタルな曲だ。それらは、今の田中のパーソナルな音楽的興味がストレートに表れたものなのだろう。彼のポップ・センスと実験精神が、絶妙のバランス感覚で示された作品である。