（1930-2017）上尚司は、1930年に東京都で生まれ、1955年に東京芸術大学を卒業した画家です。2017年に逝去し、兵庫県教育大学の名誉教授としても知られています。亀谷美術館で現代の裸婦展奨励賞を受賞した経歴があり、気品と知性、清純さや可憐さを感じさせる女性像を描き続けてきました。美術評論家・安井収蔵は、上尚司の作品について「羞恥（はじらい）の美学を追求し、無垢で典雅な理想像を表現している」と評価しています。

上尚司「室内少女像」油彩 20号
本作品は、上尚司による女性像の一つで、静謐で優美な雰囲気が漂う一枚です。画面には、白いフリルのスカートと深い青のジャケットをまとい、控えめで気品のある表情で椅子に座る女性が描かれています。彼女は遠くを見つめながら思索にふけっているようで、手に持つ本とともに知性と内面的な深さを感じさせます。

背景には、淡い色調の壁や、テーブルの上に置かれたティーポットやカップが描かれ、日常の一瞬を切り取ったかのような穏やかな空間が広がります。上尚司が追求した「羞恥の美学」と「無垢で典雅な理想像」が、この作品にも表れており、女性の清楚さと可憐さが印象的です。彼女の佇まいは、外見の美しさだけでなく、内面的な清らかさと優雅さを観る者に伝え、観賞者を静かな感動へと誘います。

この絵は、上尚司が生涯を通じて描き続けた「品格と知性を備えた女性像」の一例であり、彼の美学が遺憾なく発揮された作品と言えるでしょう。画伯の美人画の名画です。