FREDERIC CHOPIN: 14 WALTZES
E flat major, Op. 18・A flat major, P. 34, No. 1・A minor, Op. 34, No. 2・F majer, Op. 34, No. 3
A flat majer, Op. 42・E minor, Op. posth・D flat majer, Op. 64, Mo. 1・C sharp minor, Op. 64, No. 2
A flat majer, Op. 64, No. 3・A flat majer, Op. 69, No. 1・B mimor, Op. 69, No. 2
Three short Waltzes, Op. 70(No. 1 - G flat majer・No. 2 - F miner・No. 3 - D flat majer)
FRANTISEK RAUCH, PIANO
SUPRAPHON E10168 Monaural (mono issue only)
チェコの誇る巨匠ピアニスト、フランティシェク・ラウフ(Rauch、Frantisek 1910.2.4 ~1996.9.23)の録れたショパンのワルツ全集(全14曲)である。故佐藤泰一氏が自著『ショパン・ディスコロジー(昭63;音楽の友社)』の中で聴いてみたいワルツ全集として4LPが列挙されていたが、その筆頭に挙げられていたのがこのラウフ盤である。
長年にわたりプラハ藝術アカデミーの教授を、またチェコのショパン協会会長(President of the Czechslovak Chopin Society)を務めていたラウフのショパン演奏は国際的にも最高の評価を得ていた。英国のピアニストで評論家でもあった碩学J. M-Campbell.キャンベルは彼の著書の中でラウフが録れたショパンの第二協奏曲の録音を激賞しつつショパン弾きとしてのラウフの資質をルービンシュタインやアラウのそれと比較し論じている。
『彼の弾くショパン演奏の最上のものは総てのショパン演奏家の最も満足出来るものの一つに数えられる。彼はショパンの第ニ協奏曲をスメターチェクの指揮で録音しているが、その演奏は実に感動的であって藝術的な成就(very moving and artistially successful)と嘆賞されるべきである。(中略)彼の技巧は現在のレベルから見ても全く遜色なく卓越し磨きぬかれている。第二楽章の繊細優美さには金銀細工の藝術品を見る想いがする。ショパン弾きとしての彼は、外向的なルービンシュタインというよりアラウのやうな思考型で、音楽的効果を運指によるのではなくむしろ精神の営みから引き出そうとするのである(J. M-Campbell: CHOPIN PLAYING;VICTOR GOLLANCZ、1981)』。
このJ.M.キャンベルのラウフのピアノ協奏曲第2番の演奏への讃辞はそのままこのワルツ集にも当て嵌まると云えるだろう。立ち上がりの良いタッチから生み出される鳴り切った豊麗で明澄な音色と自然なテンポで艶やかな旋律線を格調高く歌い上げて、珠玉のワルツの悉くをJ.M-Campbellの云うまさに『金銀細工の藝術品』にしている。
ラウフはプラハ音楽院でホーフマイスターに師事し、1932年にチェコ・フィルと共演しデビュー、1938年に「プラハの春」国際音楽コンクールに入賞、またチェコの偉大な作曲家、ヴィーチェスラフ・ノヴァーク(Vitezsla Novak 1870~1949)に師事し作曲を学び数多くの作品を残している。後年、インタビューのなかで、自身作曲を学んだことが演奏作品の構成的な面での把握に大きく役立ったと自身も述べている。その後は華々しく国際的な演奏活動を繰り広げ、ドイツ、デンマーク、ベルギー、フランス、スペイン、ポーランド、そして1961年には日本を訪れ、ベートーヴェンの「皇帝」協奏曲をスメタチェックの指揮で弾き(東響定期 1961.2.10 日比谷公会堂)玄人筋にも絶賛され正統派の巨匠であることを江湖に知らしめた。そのレパートリーは古典派からロマン派まで広く、自国の大作曲家であるスメタナやノヴァークの作品を頻繁に取り上げている。
当出品LPの盤面の状態は実に美麗で目立つ瑕は皆無だが、試聴するとごく微かなティック音が瞬間的に聴かれた箇所があったのと、第2面の終わりから二番目の作品70-2の末尾に極小の瑕らしきものがあり数回の微かなティック音が聴かれた。ジャケットは全く汚れ、瑕等は見られない。