JACQUE THIBAUD plays LALO: SINFONIE ESPAGNOLE
performed with orchestra cond. Stokowski
ALFRED CORTOT plays WEBER: SONATA No. 2 IN A-FLAT
Recital Records IGI-339
ティボーの弾くスペイン交響曲、「生前、ティボーが最もよく演奏したきわめつきの大物(西條卓夫)」、にはライヴとセッション録音を合わせ数種の録音が遺されているが、ここに聴く1947年のストコフスキーとの協演によるライヴ録音と他の録音とでは同日の論ではない。盤鬼西條卓夫は初出時、藝術新潮LP欄に「立派な風格、徹底した個性味、曲への全体的な強い把握力、精妙自在なアゴーギク、内燃的な激しい情熱がかもす快く冴えた緊迫感と、高度に垢抜けた匂やかな美しさ(西条卓夫)」とあたかも熱に浮かされたかのやうに盤評を綴っている。
このLPの更なる魅力はオッドサイドのコルトーによるウェーバーのピアノソナタ第2番で、これも昭和の古老が口を極めて称讚していたものである。まずその皮切りが往年の作曲家兼大ピアニストであった宅孝二氏、ちなみに氏は10年の長きに亘ってパリ、エコール・ノルマルでコルトーの薫陶を受けているが、昭和十六年七月新譜で日・ビクターからこのレコードが発売された際に、『音楽評論』誌(昭和十六年六月號)に「ウェーバーのソナタ」と題して、次のやうな新譜試聴記を寄せている。
「フォン・レンツの話しでは、彼がリストの前で初めて此のソナタを弾いた時、未だウェーバーを知らなかったリストが全く驚嘆して了った。そして何度も自分で弾いて見てすっかり気に入ってしまった。・・・此の様な曲は十分な技術と華麗な音色で弾かれねば、大半の魅力を無くしてしまうことになる。コルトーはショパンの演奏の時より、もっと明るく、華やかで、和やかな丸みをもった音色を出して居て、シューマンの時の様に神経質な演奏をしていない。実に美しい音色を出して居る。強弱の対比も大まかで延び延びしている事など、この曲の持つ性質をよく表してゐる様に思ふ」
その他にも野村光一、大木正興のやうな斯界の大御所にこのコルトーの録音盤は絶賛されている。
○「第二番変イ長調作品三九は規模壮大で、技巧内容の円熟した堂々たる傑作である。コルトーが弾いた見事なレコードがある。これはコルトーが戦前ヨーロッパで遺した最終の一レコードであるらしい。従って、彼の円熟し切ったロマン的特徴を発揮したものと云える。」(野村光一『レコードに聴くピアノ音楽』、音楽の友社、昭和二八年)
○「ウェーバー』の奏鳴曲第二番は最近のもので、形式化して来た彼の演奏の内にも、尚燦然たる華麗さと濃い浪漫的情緒が失われて居らず、寧ろ両者が渾然と調和をなして見事な効果を示してゐる」(大木正興『名演奏家事典』名曲堂 昭和二五年)
前者のソースはアセテート録音、後者は1941年頃のSP録音であるが、実に鮮明な収録音で、またプライベート・レーベルにも拘わらず盤質、プレスも極めて優秀である。盤面は美麗で殆ど使用の跡は見られない。ジャケットはシームに経年の傷み、色褪せが見られるが破損、滅失箇所は無し。